オフシーズンの目玉と言えば、「FA宣言」ですね。2021年シーズン広島カープでは、大瀬良投手・九里投手・堂林選手がFA権を取得して話題になりました。【カープ×FA】大瀬良投手が残留する5つの理由とは!?
そんなFA権ですが「FA権ってなに?どうやった移籍することになるの?」と疑問に抱くことも多いのではないでしょうか。
今回の記事では以下についてまとめました!
- FA権が取得できるまで
- FA権を行使する場合の流れ
- FA権を行使した時に発生する補償とは?
FA権とは?
そもそもFA権とはどういった権利でしょうか?
FA権とはフリーエージェント権の略で、この権利を所有する選手はいずれの球団とも選手契約を締結することができるようになります。
FA権には国内FA権と海外FA権の2種類あり、国内FA権を所有する選手はNPB(日本野球機構)組織のいずれの球団とも選手契約を締結できます。一方、海外FA権を所有する選手は外国のいかなるプロ野球組織の球団も含め、国内外のいずれの球団とも選手契約を締結できます。
・国内FA権を所有する選手:日本国内の12球団であれば、自由に移籍・契約ができる
・海外FA権を所有する選手:国内外すべてのプロ野球球団(海外は主にメジャーリーグ)と移籍・契約が可能
ちなみに、海外FA権を行使してメジャーリーグへ移籍する方法もありますが、メジャーリーグへの移籍は”ポスティング制度”を行使することでも可能です。2015年の前田健太投手はポスティング制度での移籍ですね。
FA権の取得条件は?取得までの期間は?
FA権の取得条件には、一軍選手登録されていた期間(=シーズン数)が関わってきます。
【FA権取得までに必要なシーズン数】
入団年・対象選手 | 国内FA権 | 海外FA権 |
2006年ドラフト以前の入団全選手 | 8シーズン | 9シーズン |
2007年ドラフト以降入団の高卒 | 8シーズン | 9シーズン |
2007年ドラフト以降の大卒・社会人卒選手 | 7シーズン | 9シーズン |
国内FA権は入団年と出身によって取得までの期間が変わります。2007年ドラフト以降の大卒・社会人卒選手のみ7年で取得することができます。
1シーズンとはどうやってカウントするのか?
【基本】シーズン中145日以上の一軍選手登録で1シーズンに
1シーズンの数え方ですが、こちらがやや複雑です。基本的な数え方は以下の通りです。
- シーズン期間中に145日以上一軍選手登録されたシーズンを1シーズンとしてカウントする
- 試合出場数ではなく、登録日数なので試合に出なくとも一軍にいれば1日とてカウントする
- クライマックスシリーズも日数にカウントする
プロ野球は例年3月下旬に開幕し、10月上旬までには日本シリーズが終了するので約6か月(180日)間シーズンが続くことになります。そのため、FA権取得に関わる1シーズンを積み重ねるためにはシーズン中の約8割の期間1軍登録される必要があります。
試合数ではなく一軍出場選手登録期間がFA権の取得に関係あります!
一軍選手登録が145日に満たなかった場合
一軍選手登録期間が1シーズン145日満たない場合は、他のシーズンの登録日数と合算して145日で1シーズンとカウントします
【特例措置】故障者特例措置
野球選手には怪我がつきものです。そんな、怪我に関係した特例措置があります。
それは、怪我によって一軍出場選手登録を抹消された場合、特例で日数が補填されるというものです。
グラウンド内で故障(怪我)をしてシーズンの登録日数が145日満たさない場合、登録抹消日から2軍公式戦に出場するまでの期間最大60日加算されます。
前提条件として前年度に一軍出場選手登録が145日以上であることが定められています。
【特例措置】投手の登録日数加算に関する特例措置
こちらは、先発ローテーション投手を対象とした制度です。開幕時とオールスターの前後が対象となります。
- 開幕時:ローテーション投手が、開幕日から7日以内に一軍登録された場合、開幕日から最初の登板日までの期間が一軍出場選手登録期間に加算
- オールスター時:ローテーション投手が、オールスター第1戦の7日前以降に登録抹消され、かつオールスター最終戦後7日以内に1軍再登録された場合に、登録抹消日から一軍再登録前日までの期間を加算
先発ローテーション投手は週に1度の登板なので、開幕前やオールスター前は一定期間出番がなくなる投手は一軍登録を外れることが多いです。そんな先発投手へ配慮した特例措置ですね。
FA権行使の流れ
続いて、FA権を行使するまでの流れを確認しましょう!FA権を行使することを「FA宣言」と呼び、選手は他球団との交渉ができるようになります。
【FA宣言までの流れ】
1)FAの資格を取得した選手は、日本シリーズが終了した日の翌日から土、日、祭日を除く7日間以内に、FAの権利を行使するかどうかを表明する。
↓
2)上記期間を経た翌日に、「FA宣言選手」として公示。
↓
3)公示の翌日から旧球団を含めいずれの球団とも次年度選手契約締結交渉を行うことができる。
今年の日本シリーズは11月20日より始まります。最短で4戦、最長(引き分けなしの場合)で7銭で終わります。そのため、2021年の宣言選手公示日は以下の通りになります。
日本シリーズ終了日 | 11月24日 | 11月25日 | 11月27日 | 11月28日 |
FA宣言選手公示日 | 12月4日 | 12月7日 | 12月8日 | 12月8日 |
FA宣言したからと言って必ず移籍しなければならないわけではありません。FAを行使して残留するというパターンも可能です!以前のカープはこの「FA宣言して残留」を認めていませんでしたが、近年は「FA宣言して残留」も認めていますね。(まだ実績はありませんが)
FA移籍する際に発生する補償
選手がFAを行使し他球団に移籍した場合、選手を獲得した球団は前所属球団に対して。「金銭補償」もしくは「人的補償」をしなければなりません。ただし、必ずしも補償が発生する訳ではないので注意が必要です。
補償が発生する条件
補償の発生有無は、移籍する前の球団における年俸によるランク(A~C)で決定します。このランクで、AランクもしくはBランクに該当する選手が移籍する場合に限って補償が発生します。
そのランクとは以下の通りです。
- Aランク:年俸上位1位~3位の選手(外国人を除く)
- Bランク:年俸上位4位~10位の選手(外国人を除く)
- Cランク:年俸11位以下(外国人を除く)
今年カープでFA権を獲得した大瀬良投手、九里投手はそれぞれチーム内年俸ランキング(推定)が6位と9位ですのでBランクに該当します。すでに残留を表明した堂林選手は補償が発生しないCランクの19位でした。
補償内容
補償の内容はAランク選手・Bランク選手によって異なります。補償の具体的な内容は以下の通りです。
Aランク | Bランク | Cランク | |
人的補償あり | 年俸の50% | 年俸の40% | なし |
人的補償なし | 年俸の80% | 年俸の60% | なし |
人的補償をありにするかなしにするかは、移籍した選手の前所属球団に決定権があります。
カープでは、赤松コーチや一岡選手、長野選手が人的補償で移籍した選手ですね!
この「人的補償」ですが、当然移籍先球団の全選手が選択対象になるわけではありません!
プロテクト制度
「プロテクト制度」とは、人的補償選手として絶対に指名してされたくない選手を相手球団に提示する制度です。
FAした選手を獲得した球団は、28人の選手をプロテクトして、人的補償の対象外とすることが出来ます。通常、主力選手や人気選手、若手の有望株がプロテクトされます。
FA移籍した選手の前所属球団は、移籍先の球団から提出されたこの「プロテクト」リスト外の選手の中から人的補償を選択することになります。このプロテクトリストは、非公開なのでファンや選手も分からないようです。
近年では、丸選手が巨人へ移籍した際に、長野選手が「プロテクト」対象外のためカープが指名したことで話題になりましたね
ちなみに、育成選手はそもそも人的補償の対象とならないのでプロテクトリストに登録する必要がありません。
FA権は再取得可能!
取得したFA権を行使した場合、移籍・残留を問わず4年後(4シーズン後)に再度FA権を取得できます。この時に再取得したFA権では海外FAも可能です。
FA権を行使しなかった場合はそのまま権利を保有した状態となる
一度取得したFA権を使用しなかった場合、選手はFA権を保有した状態が続きます。現在のカープでのFA権保有者をまとめてみました!
現在のFA権保有者(2021年シーズン終了時点)
選手 | 取得年 | 種類 | 契約状況 |
長野久義 | 2018年 | 海外 | 単年契約中 |
松山竜平 | 2020年 | 海外 | 単年契約中 |
會澤翼 | 2020年 | 海外 | 3年契約中2年目 |
菊池涼介 | 2019年 | 国内 | 4年契約中2年目 |
野村祐輔 | 2019年 | 国内 | 2年契約2年目 |
田中広輔 | 2020年 | 国内 | 2年契約1年目 |
大瀬良大地 | 2021年 | 国内 | 残留決定! |
九里亜連 | 2021年 | 国内 | |
堂林翔太 | 2021年 | 国内 | 残留確定 |
参照:フリーエージェント有資格選手 | 2021年度公示 | NPB.jp 日本野球機構
長野選手と松山選手も単年契約なので、一応今オフにFA権を利用して移籍するという可能性もありますね。ほほ可能性は0だと思いますが。。。
まとめ
今回はFA権についてまとめてみました!FA権取得の仕組みや行使の流れについてわからなかった方もこれを読んで少しは理解いただけたのではないでしょうか?
FA権に関しては、取得条件や使用の流れ、補償と様々な要素があり大変複雑だな制度ですね。。。
FA権は限られた選手のみが取得できる権利ですので、行使するもしないも選手の自由ですね。もちろんカープの選手にはFA権を取得しても残留してほしいですが、仮に権利を行使し移籍したとしても、その決断を尊重しようと思います!
FA取得後にカープに残ってくれた選手にはそれまで以上の熱い声援を送りたいと思います!
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