近年プロ野球界では打撃の指標としてOPSが重要とされるようになってきました。
本ブログでも、度々OPSを用いてカープの選手を評価しています。
野球を見始めてまだ間もない方や昔からの野球ファンの中にもOPSと言われても何のことかさっぱり分からないと思います。
今回は、OPSとはどういった指標でどのくらいの数値だとよい選手の基準になるのか。また、OPSと大きく関わりのある指標の出塁率・長打率についても計算方法と目安をまとめたいと思います。
OPSとは
OPSとは簡単に言うと、打者の総合的な能力の高さを表す指標です。
早速ですが、OPSはどのようにして算出するのでしょうか。
【OPSの計算方法】
OPS=出塁率+長打率
このようにシンプルな計算方法でOPSは算出することができます。
計算式に出てきた出塁率・長打率について、あまりピンとこない方もいると思いますので、出塁率と長打率についても説明します。
出塁率とは
出塁率とは簡単に説明すると選手が塁に出た確率を表す指標です。つまり「選手がどれくらいの確率でアウトにならないか」とも捉えることができます。
出塁率の算出方法は以下の通りです。
【出塁率の計算方法】
出塁率=(安打数+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)
OPSとは違って少し複雑な計算式になっていますが、日本プロ野球機構(NPB)の公式サイトに分かりやすい解説もあります。
出塁率 = (安打数+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)
出塁率とは、打数、四球、死球、犠飛の合計数のうち、四球、死球、安打で出塁した割合を表します。犠飛のときは出塁ではないので出塁率は下がります。犠打も出塁ではないですが計算から除かれている為、出塁率は変わりません。また失策で出塁したときは、打数が1増えるだけなので出塁率は下がります。
記録の計算方法 | 野球の記録について | NPB.jp 日本野球機構
打率に四死球で出塁した確率を足したものが出塁率と考えていいかもしれません
出塁率は打率より重要!
ここで問題です。
打率.298・出塁率.320の選手Aと打率.265・出塁率.365の選手Bだとどちらが優れた選手と呼べるでしょうか。
打率はA選手が優れていますが、出塁率でみるとB選手に劣っています。
現代の出塁率を重視する風潮からすると、B選手の方が優れていると考えられるかもしれません。
なぜなら、上述の通り出塁率=アウトにならない確率だからです。
野球は基本的に27アウトのうちにどれだけ多くの点数を取れるかを競うスポーツです。そのため、できる限りアウトにならないことが重要になります。こうした背景から多くヒットを打つ選手(=打率が高い選手)よりもアウトになる確率が低い選手(=出塁率が高い選手)の方が優れていると考えられるようになってきました。
ちなみに、A選手は2021年シーズンの小園選手でB選手は2021年シーズンの丸選手の成績です。
小園選手はこの出塁率の改善が当面の課題で、東出コーチからもその出塁率の悪さを指摘されているようです。「打率だけでは意味ないぞ」 広島首脳陣が課した若手への宿題 小園らが積極性と出塁率の両立目指す― スポニチ Sponichi Annex 野球
長打率とは
長打率はややこしい指標なので、まずはNPB公式サイトの説明を見てみましょう。
長打率 = 塁打数÷打数
長打率とは、1打数あたりの塁打数の平均値を表します。塁打とは、「単打=1、二塁打=2、三塁打=3、本塁打=4」として計算します。1打数1安打1本塁打の選手は、塁打数の4を打数の1で割るので、長打率4.000となるわけです。
記録の計算方法 | 野球の記録について | NPB.jp 日本野球機構
長打率とはつまり、打者が1打席で稼げる塁打数を表した指標になります。その打席で長打を打つことができる確率ではないので注意が必要です。
長打率の計算方法をあらためてまとめると次の通りになります。
【長打率の計算方法】
長打率 = 塁打数÷打数
※塁打数は単打=1、二塁打=2、三塁打=3、本塁打=4 として計算する
例を挙げると、
1打席目にホームラン、2打席目にアウトだった選手の長打率は2になります。
⇒計算式:(4+0)÷ 2 = 2
1打席目にツーベース、2打席目もツーベースだった選手の長打率も2となります。
⇒計算式:(2+2)÷ 2 = 2
このように長打率はツーベース以上の長打を打つ確率ではないことが分かりますね。
長打率は誤って覚えてしまわないように注意しましょう!
OPSの評価の見方
OPSの算出方法を見てわかる通り、OPSは数値が高いほど「塁に出る能力も長打を打つ能力も優れている」ということになります。
つまり、OPSが高い選手=得点への関わり合いが大きい優れた打者ということになります。
それでは、どれくらいのOPSがあれば優れた打者と考えられるのでしょうか。
データ会社やサイトによって様々な目安がありますが以下の見方が一般的と思われます。
評価 | OPS |
非常に素晴らしい(球界代表レベル) | 1.000以上 |
素晴らしい(リーグを代表する打者) | .900 |
優秀(強打者) | .800 |
平均 | .750 |
悪い | .675 |
かなり悪い | .600 |
打率が3割を超えると優れた打者と考えられるように、OPSでは.800を超えると優秀な打者であるということが分かります。
OPSの問題点
万能な指標に見えるOPSですが、問題点も二点あります。
選手のタイプが分からない
一つ目は、OPSだけでは打者のタイプが分からない点です。
OPSは出塁率と長打率を足し合わせたものなので、出塁率と長打率が同じ価値の前提で算出されています。
そのため、OPSの優れた選手がいても数値を見ただけでは「長打力が優れた打者か出塁能力に長けた選手か」分かりません。
選手のタイプを知るためにはOPSと合わせて出塁率と長打率も確認する必要があります。
走塁能力が考慮されていない
打者には打撃だけでなく走塁能力も求められます。打てて走れる選手こそ本当の一流選手とも考えられます。
しかし、OPSでは走塁能力に関する要素が含まれていません。
足が速い選手は内野安打も多く出塁率が上がりやすくなるため、多少なりともOPSに影響があるかもしれませんがそれもわずかなものでしょう。
例えば、以下の2選手をOPSを用いて評価するとどうなるでしょう。
【選手A】4打数1安打(ツーベース)
【選手B 】4打数1安打(シングルヒット)+1盗塁
選手Bもシングルヒットを打った後、二塁へ盗塁をしているのでどちらの選手も一人の力で二塁まで進塁したことになります。
それでは、OPSを算出してみましょう。
【選手A】
出塁率:1÷4=.250
長打率:2÷4=.500
OPS=.250+.500=.750
【選手B 】
出塁率:1÷4=.250
長打率:1÷4=.250
OPS=.250+.250=.500
実際の結果としてはランナー二塁という同じ状況を作ったにもかかわらず、OPSを比較すると選手Aが優れた選手という結果になりました。
このようにOPSは走塁能力が考慮されていないため、かつての東出選手のような俊足好打の選手には不利な指標となっており、長距離打者に有利な指標となっています。
鈴木誠也選手や大谷選手はOPSの数値も高く盗塁数も多く、打って走れる万能な選手です!
OPSを見るときは他の指標も確認するべし
OPSには以上の問題点がありますが、やはり打者を評価するには分かりやすい指標です。
そのため、選手のタイプを考え出塁率・長打率・盗塁数などと併せて確認するといいかもしれません。
OPS・長打率・出塁率のシーズン成績ランキング
これまではどういった選手が優秀なシーズン成績を残していたのかご紹介します。
誰もが知っているような選手ばかりがランクインしています。
<OPSのシーズン成績ランキング>
順位 | 選手名 | 所属 | OPS | 記録年 |
1 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.293 | 1974年 |
2 | ランディ・バース | 阪神タイガース | 1.258 | 1986年 |
3 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.255 | 1973年 |
4 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | 1.244 | 1985年 |
5 | バレンティン | 東京ヤクルトスワローズ | 1.234 | 2013年 |
6 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | 1.232 | 1986年 |
7 | アレックス・カブレラ | 西武ライオンズ | 1.223 | 2002年 |
8 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.211 | 1967年 |
9 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.21 | 1966年 |
10 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.204 | 1976年 |
<出塁率のシーズン成績ランキング>
順位 | 選手名 | 所属 | 出塁率 | 記録年 |
1 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | .487 | 1986年 |
2 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | .4806 | 1985年 |
3 | ランディ・バース | 阪神タイガース | .4805 | 1986年 |
4 | 落合博満 | 中日ドラゴンズ | .4728 | 1991年 |
5 | 小笠原道大 | 日本ハム | .4725 | 2003年 |
6 | 柳田悠岐 | ソフトバンクホークス | .4694 | 2015年 |
7 | ペタジーニ | ヤクルト | .4687 | 1999年 |
8 | 丸佳浩 | 広島東洋カープ | .468 | 2018年 |
9 | アレックス・カブレラ | 西武ライオンズ | .467 | 2002年 |
10 | ペタジーニ | ヤクルト | .466 | 2001年 |
<長打率のシーズン成績ランキング>
順位 | 選手名 | 所属 | 出塁率 | 記録年 |
1 | バレンティン | ヤクルト | .779 | 1986年 |
2 | ランディ・バース | 阪神タイガース | .777 | 1985年 |
3 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | .763 | 1986年 |
4 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | .761 | 1991年 |
5 | アレックス・カブレラ | 西武ライオンズ | .756 | 2003年 |
6 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | .755 | 2015年 |
7 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | .746 | 1999年 |
8 | 小鶴誠 | 松竹 | .729 | 2018年 |
9 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | .725 | 2002年 |
10 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | .723 | 2001年 |
各ランキングに共通しているのは「長打力のある打者」がランクインしています。出塁率ランキングでも足の速い打者ではなく長距離打者がTOP10を占めています。
このことから、長距離打者は相手投手から警戒され四球が多くなるため自然と出塁率も高くなりOPSも高くなるといった傾向があることが考えられます。
長打力のある打者は貴重ということが分かりますね。
まとめ
OPS・出塁率・長打率について理解いただけますでしょうか。
OPSは出塁率+長打率で算出することができる打撃の総合指標です。
打率や本塁打数を見て評価するよりもOPSを見て評価した方がどれほどチームの得点=勝利に貢献しているかが分かると思います。
これまで馴染みのなかった方もこれからはOPSを見ることで、本当の選手の貢献度が分かってくるかもしれません。
選手成績を見る際はOPSも確認して、より一層プロ野球を楽しみましょう!
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