カープの島内投手が来季のセットアッパー候補に名乗りを上げています。
今季も9月以降はセットアッパーを任される試合も多く、終わってみればチーム3位の15ホールドを記録しています。
ルーキー時代から島内投手のストレートは話題になっており、個人的にも期待している選手の一人です。
そんな島内投手について、今回は以下の点をまとめてみたいと思います。
- 島内投手の魅力とは?
- 島内投手の課題はメンタルにあり!?
- 来季のセットアッパーは島内投手でいくべき!
島内投手の魅力とは?
カープ 島内 – Bing images
2018年のドラフト2位で指名された島内投手はルーキー時代から期待されており、1年目から1軍でも登板しています。
1年目・2年目は防御率も4点台と思ったような活躍ができませんでしたが、3年目の今季は防御率も3点台となり、1・2年目を上回る51試合に登板するなどベンチからの信頼も厚くなったように思えます。
その信頼の表れが、シーズン終盤でのセットアッパー起用でしょう。今季カープはセットアッパーをなかなか固定できずにいましたが、終盤は島内投手がセットアッパーを任される試合が多くありました。
セットアッパーを経験することで本人も「セットアッパーとして活躍したい」という気持ちも強くなったようで、来季のセットアッパーへ立候補しています。
以下に3年目までの成績を記しますが、3年目の今季はこれまで課題だった”四球数”が大幅に改善されています。この制球力の向上が、今季の飛躍に大きく関係していると考えられます。
防御率 | 登板 | ホールド | 被本塁打率 | 奪三振率 | 被打率 | 与四死球 | 与四球率 | WHIP | K/BB | |
2019 | 4.40 | 25 | 0 | 0.32 | 10.36 | .192 | 21 | 6.59 | 1.33 | 1.74 |
2020 | 4.54 | 38 | 4 | 0.24 | 11.47 | .216 | 29 | 6.69 | 1.51 | 1..71 |
2021 | 3.12 | 51 | 15 | 0.73 | 9.37 | .234 | 14 | 2.57 | 1.18 | 6.64 |
- 与四球率:投手が1試合(9イニング)完投したと仮定した場合の平均与四球数
- K/BB:1つの四球を与えるまでに何個の三振を奪えるかを表す
つまり・・・与四球率は低ければ低いほど良い、K/BBは高ければ高いほど良い指標
メジャーリーグにおける与四球率の平均は3.2程度とされる
K/BBが3.5以上で及第点とされ、5.0を超えると優秀とされる
制球力の向上がわかる指標が、上記の「与四球率」と「K/BB」です。
島内投手は3年目の今季、これら2つの指標が大幅に改善されています。昨シーズンまでは両指標が島内投手の制球力の悪さを物語っていましたが、今季の与四球率はメジャーリーグの平均値以下、K/BBも及第点とされる3.5を大幅に上回る6.64を記録しています。
来季も今季と同程度の「与四球率」と「K/BB」を記録できるようであれば、今季以上の成績を残せる可能性もあるのではないでしょうか。
被打率は今季がキャリアワーストだったもののWHIPはキャリアハイということからも、四球がどれだけ余計なものか伝わってきますね
伸びのあるストレートは一級品
島内投手と言えば、なんといってもそのストレートの質の高さでしょう。
最速157キロを誇るストレートは本人も一番自信を持っているボールで、ストレートで空振りを奪ったりファールを打たせる場面が多くみられます。
下の動画は、最速となる157キロを記録した一球ですが、打者も全く手が出せないような素晴らしいストレートになっています。
この質の高いストレートを軸に投球を組み立てることができるのが、島内投手の強みですね。
専門的な話を引用して詳しい数字を見てみましょう。ここでは、「イイダラボ」(2020年6月24日)に掲載されていた島内投手のデータを元に記載された記事を引用します。
ラプソードを使用すると、球速、回転率、回転軸、回転効率、変化量などを分析し、すべて数値として出してくれます。
では島内投手のデータを一つひとつ見ていきましょう。まず『ストレート投球時』です。SPIN(回転率)が2390。EFFICIENCY(回転効率)が99%という数値を見る限り、スピンがしっかりと効いたストレートを投げることができていると言えるでしょう。少し専門的な表現になりますが、EFFICIENCY(回転効率)が高い球は、ホップ量とシュート変化が大きいボールとなります。
島内投手のホップとシュート変化は、ブログ内では『横の変化量(H)/縦の変化量(V)』で示されていますが、これはホップとシュートの変化を示した数値です。15.2Hと49.3Vとあるので、ラプソードによると、ストレートが約15.2cmシュートし、約49.3cmホップしているということになります。
【Mac高島の超野球塾 vol.14】『ラプソード』で生まれ変わったカープ島内颯太郎投手“何が変わったか”をデータから読み解く|carp|連載|広島アスリートマガジン (hiroshima-athlete.com)
ストレートは球速も重要ですが、”スピン回転数”がより重要とも考えられます。
”スピン回転数”が高い方がボールに「揚力」が働くため落ちづらく「伸びのあるボール」ということになるからです。※ボールに回転をかけることで、上下で気圧の差が生まれ、「揚力」という上向きの力が発生する。詳細はこちらを参照ください。データで明らかになる 吉田輝星投手の「ストレート」 | NHKスポーツ
メジャー投手の平均が2200回転と言われともいわれますので、2390回転とメジャー投手の平均回転数を上回る島内投手のストレートは一級品といっても過言ではないでしょう。
映像やスピン回転数からも島内投手のストレートがどれほど凄いか分かりますね
昨シーズン改良したフォークも有効か
島内投手は入団当初からフォークを投げていましたが、ある課題がありました。
それは「ストレートとフォークボールを投げるリリースポイントが違う」といったものです。以前の島内投手はフォークのリリースポイントがストレートのリリースポイントより低かったようです。
フォークボールは落ちる球なので、ストレートよりも低いポイントでリリースすると、ストライクゾーンより低い”ボールからボール”へと変化してしまいます。
最初からボール球とわかれば、打者も振らないので意味がありませんよね。
また、プロ野球の打者は一流なので、わずかなリリースポイントの違いで投げる球がわかってしまいます。そのため、島内投手はこのストレートとフォークのリリースポイントを同程度にする必要がありました。
そこで島内投手は昨シーズン、”ラプソード”という測定器を用いてこのフォークボールの改良に挑みました。その結果、ストレートと同じリリースポイントでフォークを投げることができるようになり、フォークの制球力も向上したのです。
この改良版のフォークを投げることができるようになったおかげで、昨シーズンは5者連続三振などを記録しています。“鯉のドクターK”広島・島内 圧巻の5者連続三振 リーグトップの奪三振率 あるぞ勝利の方程式入り― スポニチ Sponichi Annex 野球
●ラプソードとは?
ラプソードは2016年にアメリカで誕生した、野球に必要な数値を測る最新のポータブルトラッキングシステムです。レーダーとカメラが内蔵されたコンパクトな本体を設置するだけで、投手であれば回転数や回転軸、変化量、打者であれば打球速度や打球角度など、様々なデータをリアルタイムで取得することができる。
ラプソードを使用することで、球速、回転率、回転軸、回転効率、変化量、リリースポイントの高さなど具体的な数値で自分の力を測れるため、課題の把握や改善に役立つ。
島内投手は力強いストレートを持っていますが、変化球に課題がありました。ボールが抜けたり、叩きつけてワンバウンドになったりと制球力が不足している、ストレート頼りの投球になっていました。
なぜ変化球の精度が低かったのか?という部分をラプソードで解析しました。
ストレートのリリースポイントの1.74mの高さで投げているのに対し、フォークは1.67mでした。
フォークは落ちていく変化球であるのに、ストレートより低い位置で投げてしまうとストライクゾーンには入らず、”ボールからボール”の軌道になってしまいます。そうなると打者は手を出してきません。
相手打者に打ち損じをさせるためには、ストライクだ!と打者に思わせなければならないので、ボールからボールになる球ではなく、“ストライクからボール”になる球に修正していく必要がありました。
リリースポイントがストレートと同じ高さで、その軌道からボールを変化させることができれば、打者にストレートがきた!と”錯覚”を起こすことができ、打ち取る確率は高くなります。
また、ストレートと同じ軌道に乗せていければ、ストライクを取るカウント球として使えるようになっていくはずです。
しかし、下記データのように5月の段階でリリースポイントの高さをストレートと同じ1.74mから変化球を投げられるようになってきました!ストライク率はぐんと上がっています!
「ラプソード」について: イイダラボ (cocolog-nifty.com)
フォークの制球力が向上しため、相手打者はストレートだけに山を張ることができなくなったと思います。フォークもあると頭に散らかせることで、最大の武器であるストレートもより一層生きてきますね。
今季飛躍のカギはチェンジアップにあった?
フォークも使える武器になった昨シーズンですが、1年目より成績は思うほど向上していません。フォークが使えるようになったといっても、自信をもって使えるボールがストレートとフォークの2球種のみだったので、相手からすると対応しやすかったのかもしれません。
そこで、今季の活躍につながった変化球が”チェンジアップ”です。島内投手本人もこの”チェンジアップ”に相当な手ごたえを感じているようです。
このチェンジアップでカウントを取れることで、打者は150キロ近くのストレート・130キロ台後半のフォーク・120キロ中盤のチェンジアップといった異なる3球種を頭に入れる必要があり、狙い球を絞りづらくなったことが考えられます。
チェンジアップは大学時代から投げていたようですが、プロに入って握りを変えていたようです。しかし、うまく操れなかったことから今季から大学時代の握りに戻した結果、新たな武器となったようです。
今季は課題の制球力が向上した。20年は38試合で28四球を許したが、今季は51試合で半減の14四球にとどめた。「一番大きかったのはチェンジアップ。変化球でカウントが取れるようになった」。20年までは変化球の制球が不安定で、自然と直球の割合が増えてしまっていた。「打者はゾーンの真っすぐ狙いでくる。ミートされる率が高くなると、僕も投げるのが怖くなるので、自然とコースを狙いだして、それが入らなくてボールになっていた」と振り返った。
チェンジアップは「原点回帰」で磨きをかけた。九州共立大時代から投げていたが、プロ入り後に握りを変えることに挑戦。しかしうまく操れなかったことから、「やっぱりこっちの方がいい」と、昨オフにシンカー気味に投げるという大学時代の握りと投げ方に戻し、新たに武器となった。落ち球は120キロ中盤のチェンジアップに、130キロ台後半のフォークも併せ持ち、打者を惑わす。
広島島内颯太郎、セットアッパー奪取へ意欲「開幕から任せてもらいたい」 – プロ野球 : 日刊スポーツ (nikkansports.com)
ストレートとの球速差が約30キロ近くあるチェンジアップは相当な武器になると思います。チェンジアップがあることでストレートがより一層強力なボールになったのではないでしょうか。
課題はメンタルにあり!?
島内“中崎塾”から飛躍だ 目指すは「勝利の方程式」入り/広島カープ/野球/デイリースポーツ online (daily.co.jp)
素晴らしいストレートを投げる島内投手が昨シーズンまで思うような活躍ができなかった原因の一つに”メンタル”も関係していたように思えます。
上述の通り、使える変化球が昨シーズンまでは少なかったというのもありますが、それでもビハインド時での登板は圧倒的なピッチングを披露することが多くありました。実際に、上述の5者連続三振を奪った試合も大差で負けている試合での登板です。
このように、昨シーズンまでもある程度1軍で通用する力はあったのですが、”勝ち試合”や”僅差”の試合ではほぼほぼ確実に打たれていた印象があります。
大差のビハインドゲームと勝ち試合・僅差の試合での島内投手は明らかに様子が違ったのです。
僅差や勝ち試合では制球も悪くなり、ストレートの質も落ちる。その結果、失点を重ねてしまうというパターンを多く見かけました。
これには、島内投手のメンタルの弱さが関係しているように思えます。
しかし、今季は終盤にセットアッパーを任せられ、しっかりと抑えるなどメンタル面も改善されたように思います。
その根底には、上記のチェンジアップ取得など技術面の向上により自分に自信を持てるようになったことがあると考えられます。
来季も自信をもって、僅差の勝ち試合でも自慢のストレートを活かした圧倒的なピッチングを披露してほしいです!
来季のセットアッパーは島内投手で!
個人的には、島内投手のストレートはかなり魅力的なので来季はぜひ島内投手をセットアッパーとして起用してほしいと思います。
そのためにはもちろんオープン戦などで島内投手が好投を続ける必要がありますが、、、
できればセットアッパーで固定してほしいですが、森浦投手やフランスア投手など他にもセットアッパー候補の投手はいるので、相手打者との兼ね合いを見てその日のセットアッパーを決めるという形でもいいと思います。
最終的には、一級品のストレートを投げる島内投手がセットアッパーに定着するのが理想であると考えます。
島内投手がセットアッパーに落ち着くということになれば、8回ー9回のピッチャーを固定できるようになるので、7回までの投手のやりくりがより柔軟になるといったメリットもあります。
【島内投手をセットアッパーに推す理由】
- 回転数が高い魅力的なストレートを投げることができる←最大のポイント
- フォーク、チェンジアップといった有効な変化球がある
- 制球力の課題も改善され、突発的に乱調になる可能性も低い
守護神・栗林投手とは因縁がある!?
島内投手がセットアッパーとなれば、8回島内投手ー9回栗林投手になります。
将来の”勝ちパターン”を担う可能性がある二人にはある因縁があります。
島内投手は2018年のドラフト2位で指名されていますが、当時カープのスカウトの中ではドラフト2位で栗林投手を指名するといったプランもあったようです。
ドラフト2位でカープに指名されなかったことによって、栗林投手は社会人の道へ進むことになりました。(栗林投手は2位以内での指名でない限り社会人野球に進むことを決めていたため)
そして、社会人での経験を経てカープへドラフト1位で入団し、奇しくも島内投手の同僚となります。
春季キャンプの時に島内投手は栗林投手から「お前のせいで、大学の時にプロに入れなかったんだぞ」と冗談ぽく言われたようです(笑)
─プロ1年目の話を伺っていきます。島内投手は2018年ドラフト2位でカープに入団しましたが、当時、2位で指名される予感はあったのでしょうか?
「それはなかったです。当時の僕は3位以上でなければ社会人で野球を続けることが決まっていました。指名を受けたとしても3位だろうと思っていたので、2位指名は全く予想しておらず、とにかくうれしかったのを覚えています」
─スカウトの方に話を聞くと、2位指名を島内投手か栗林投手(当時は名城大)で迷った挙句、最終的に島内投手の指名に至ったと聞きました。社会人を経て栗林投手もカープに入り、共に一軍ブルペンを支えていますが、当時の話を栗林投手としたことはありますか?
「春季キャンプの時に栗林から『お前のせいで、大学の時にプロに入れなかったんだぞ』と冗談っぽく言われました(笑)。笑って誤魔化しましたが、今は同じリリーフとして投げていますし、栗林とは縁を感じることがありますね」
8回・島内颯太郎。9回・栗林良吏。“運命の糸”で結ばれた同学年による投手リレー【INTERVIEW】(広島アスリートマガジン) – Yahoo!ニュース
まとめ
今回は来季4年目を向けてセットアッパー定着が期待される島内投手について特集しました。
私も島内投手のストレートに惚れ惚れしているファンの一人なので、ぜひセットアッパーとして活躍してほしいと思います。
その他のセットアッパー候補や守護神栗林投手についても詳しく知りたいという方におすすめの記事もあるのでぜひご覧ください
また、投手関連でいうと2022年の開幕投手争いにも要注目です!2022年の開幕投手を大胆予想した記事もあるので開幕までにぜひチェックしてください!
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